作品『凪語り』あとがき



とある検索サイトさんから、「一周年記念企画」のお知らせメールが 届いたのです。お題は「夏」及び「海」。痛い処をつかれた気がしま した。そう、私は森が、草原が大好きな反面、海は苦手だと、自覚症 状が歴然と存在していたんです。

ここは苦手克服としても、何とか物語を書けないものか。その時、偶 然ですが私は、大好きな近藤ようこの「説教・小栗判官」を再読中で した。題名どおりこれはいわゆる「説教節」「説法話」ですから、抹 香臭いと云えばそうなのですが、こういう雰囲気のものも良いんじゃ ないか、そう思いながら、プロットを進めてゆきました。

「湍津」や「豊玉」というのは、日本神話に出て来る女性の海神の名 で、神仏ごちゃまぜです。

「ライカ」という発音がまた好きな私。「雷火」は藤原カムイに先を 越されているので却下(笑)。こちらも好きな漫画。

同じく大好きな荒木飛呂彦の言葉に、こんなものがあります。 「運命は変わらない、変えられない。変えられないから運命なんだ。」 その通りです。何度人生をやり直しても、同じ結末を迎える、という 漫画を、手塚治虫や萩尾望都が既に描いています。

この物語の根底も、そこにあります。 しいらは人生をやり直して、結局はやはり同じ歳に死ななければなら ない。その悲しみをまた味わう事にはなるのですが・・・。

人のこころは如何に変わりやすく、残酷で、また逆に、如何に不変で 優しさに満ちあふれているか。この、矛盾にも挑戦してみました。

苦手な海モノ、を描くにあたって、文章は、自分の一番書きやすい文 体を用いました。お陰で余計に抹香臭くなっちゃいました(笑)。

企画では選漏れに終わりましたが、自分ではそこそこ納得のゆく作品 になったと思っているので、これで選漏れなら仕方ないなあ、って気 分です。言い訳っぽく聞こえちゃうかな?(笑)





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