夜空に三日月が寂しげに輝く夜。 丘の上に大きな影と小さな影が静かにたたずみ話をしていた …… 「 ねぇ、お月様ってなんで丸くなったり細くなったりするの? 」 その言葉を聞いた大きな影は瞳を細め少し寂しそうに三日月を見た。 優しく、まるで小さな影を包み込む様な声で語り始める。 「 ずっとずっと遠い昔はお月様はもっと明るく何時も真ん丸だったんだ 」 「 勿論、空は今より明るくて星なんて一つも無かった 」 「 ただ、この世に人が生まれた事でお月様は変わってしまう 」 「 なんで変わってしまったの? 」 小さな影は瞳を輝かせ大きな影に聞き返した。 大きな影は一度小さな溜め息をついてから静かに続きを語る。 「 明るくて真ん丸なお月様は人の内面まで照らす力があったんだ 」 「 うんうん 」 「 最初、人は他の生き物達と同じように生きていた 」 「 そして長い長い月日がたつうちに人は他の生き物にない心が芽生えてしまった 」 「 どんな? 」 「 妬みや私利私欲の為に他のものの事を考えない行為を始めた 」 「 生きて行く為に必要でない殺生を平気でする様になっていく 」 「 そんな闇の恐ろしい心が …… 」 小さな影は少し怖くなり微かに震えながら話を聞いた。 「 お月様はその心を作ってしまったは自分のせいだと思ったんだ 」 「 どうして? 」 「 自分が人の心を明るく照らしてしまった為に闇が出来て、その中から生まれたんだと 」 「 それ以来お月様は嘆き悲しみ毎日のように涙を流した 」 「 光のしずくの涙を …… 」 「 で、どうなったの? 」 小さな影はお月様を可哀想だと思い少し潤んだ瞳で大きな影の方を見た。 大きな影は小さな影の瞳をみて語り続ける。 「 そしてお月様は全ての光を失ってしまった 」 「 ただ光のしずくの涙で出来た星達に励まされて、また少しだけ光を取り戻すんだ 」 「 そっか良かった!」 「 で、でもお月様は今でも丸かったり細くなったりしてるよ? 」 大きな影は少し残念そうに続きを語った。 「 残念な事に今でもお月様が丸く明くなると人の心の闇が見えてしまうんだよ 」 「 だから、また嘆き悲しんで光のしずくの涙を流し細くなっていくのさ 」 「 なんだか、お月様可哀想 …… 」 「 そうだね。そんな悲しみのせいで今のお月様は夜空に寂しい色で輝いてるんだよ 」 大きな影と小さな影は肩を並べ寄り添いながら寂しげに光る三日月を見上げてた。 いつしかお月様が光のしずくの涙を流さなくても済み真ん丸に微笑んでいる世界が来る事を願って。 |
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