春─白梅





梅、梅。


先に細く天(あま)を指す枝が良い

しっとりと肌理(きめ)細かの

眩いばかりの鮮やかな

みどりの布団を足元に

またその飛沫のような

苔を木肌に乗せるのが良い。




ただ一本、傍らにあるのが良い

そうして花弁は白が良い。


根に屍体をいだきこむのが桜なら

梅の精気の元は何ぞやら

白く円い花の咲くごとに

雪よ雪よとなごりを惜しむ

こころの深さはいずこから。


彩りゆらぐひかりのもと

ゆるりと霞む気のなかに

湧き立つ生の気のなかに

凜と、凜とただ一本。


覚醒の、芽吹きのおとずれに

白く深きねむりへの惜別に

花を咲かせる梅が良い──。





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