冬─オリオン





今まで二度犬を飼った
二度とも結構大きな牡犬だった
二度とも夕方の散歩が私の役目となった

冬ともなれば夕刻も五時を過ぎると外は暗い
それでも大きな犬が一緒なのだから
怖いと思ったことなど一度もなかった

犬は良く訓練されている訳でもなかったから
あちらこちらで止まっては匂いをかぐ
こちらはそんな時ちょっとした手持ち無沙汰

ふと見上げるとそこに光る星々は
冬の冷気に洗われたように輝きを増している
その並びに「あ」と小さく声を上げた

「オリオン座だ。ねえオリオン座だよ。」
犬は一瞬こちらを向いてふわりと尾を振る

星座があんなに大きいものだとは思ってもみなかった


冷気が肌を刺す冬の夜
外に出るといつしかオリオン座を探す自分がいる
そんな時
喜びも、悲しみも、いつも私のそばにいて
一緒に感じてくれた二匹の犬を
思い出さずにいられない


-end-



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