作品『雫の犬─Schaferhund(2013年改稿版)』あとがき



大変お恥ずかしい話なのですが……一気集中型、と云えば聞こえも宜しいが、そうでしか書けない私、どうやら一万語辺りが限界のようで、実際、他作品を見ても、一万語を越えるものは、その辺りから随分集中力が落ちているように思います。この作品は元々が18500文字と拙作の中で最長、それだけに、まぁ、読み返せば、特に先程申しましたように終盤辺り、顔から火どころの話じゃあない。が、一度上げたものは手を加えない、という大前提。そのまま数年が過ぎました。しかし、です。ふとした折りに、以前からずっと気になっていた、「いくら青が世間知らずで気の良いお坊ちゃんと云っても、沁に、麻薬禁止を命令されて、そう素直に聞く耳持つ筈がない」……気になりだしたら止まらない。そうすればまだまだこの物語にはおかしな処がある。いくら、公私使い分けているとしても、沁が青に携帯番号を教えた処で、青から電話などある訳もないではないか。いくらお坊ちゃんの青でも、沁の正体を知って怖がらないのも妙、第一青から見た沁のイメージがあまりにも書けていない。クルマで送っていく際に、どんな話をしたのか、しなかったのかも分からない。もうこうなると、書き直さない訳にはいかなくなってしまいました。この物語は、ご存じの通り、『潮のおと』のサイドですので、今更改稿した処で、『潮のおと』と共にお読み下さる方もいらっしゃらないでしょう。本当に、ただの自己満足、それでしかありません。改稿しない主義を曲げての事でもあり、こっそり、「本物」の裏に、掲載させて頂く事にしました。青と沁は、自分の大変お気に入りのキャラですので、少しでも矛盾を軽減できた事は自分なりに嬉しく思っております。ついでに二万語を越えたのも嬉しい(笑)。尚、その他の大部分についても多少読みづらさを軽減、意味を理解しやすく変更した部分があります。シューマンの『子供の情景』を出したのはたまたま、この曲の良さを最近知る事になり、また、題名も、この物語に合う処があると思っての事なのですが、沁は実際、案外こういった曲が好きなような気がします。シューマンの知性が、沁に良く合うように思います。






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