秋─飛鳥





二年ほど前の秋のこと
「日出処の天子」の原画展を観に
万葉文化館に出向いた

美しい原画を満喫し外に出ると
さてここが何処かも定かでない

つらつらとあてもなく歩いていると
道の片方にはまるで覆うような竹林が
風にさわさわと音をたて
また片方には傾いた陽光を
一心に浴び黄金に輝く稲穂の波
その彼方には古墳らしき丘

ふと気付くと飛鳥寺に居た

お堂に入らず外気を楽しむ
そこに塚
蘇我入鹿の首塚

さてこれからどうしようと道に戻ると
運良くバスが拾ってくれた
車窓をぼんやり眺めていると
民家の庭に爛漫と咲き誇る秋桜の美事なこと

バスが駅に着くと丁度下校時間らしく
高校生たちがにぎやかに笑い話している

秋の明日香の
なんということもないただのひととき


-end-





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