ねぇ、あそぼうよ
あそびましょう。
ぎらぎらと、照りつける長い陽も、
沈めば、とろり、おねむの目。
あそぶ一日(ひとひ)は、あっという間。
今日はね、なかよしの、ようちゃんと
小川にどじょうをとりに行ったよ。
いっしょうけんめいれんしゅうして
なんどもころんで、すりきずいっぱい。
やっとのれるようになったじてんしゃで
お父さんにつれていってもらった、ひみつのばしょ。
ようちゃんにだけ、おしえてあげる。
ふたりでずいぶん走ったらば
とちゅうで道がわからなくなって
ぐるぐる、うろうろ。
ようやくなんとかたどりつけた。
じてんしゃとめて、サンダルぬいで
すあしでそっと、入った水は、ひんやりで
でもかわぞこは、ちょっぴりぬるぬるで
きゃあきゃあ、ばしゃばしゃ。
わぁ、あっちにも、こっちにも。
でもすばやくて、にゅるにゅるしてて、
ぜんぜんうまく、つかまえられなくて。
それでも、こんなにたくさんのどじょうって、
はじめてみたよ、すごいね、って
ようちゃん、とってもおどろいていたよ。
あなたは水の子
水があなたをつつみこみ
あなたのあそびをみまもるでしょう。
ねぇ、あそぼうよ
あそびましょう。
ゆびおりかぞえてまった、にちようび
たったいちにち、ボビィのおさんぽさせてもらえる日!
朝いちばんに、走っていったよ。
だってお昼になったらば、あつくてあつくて
ボビィはすぐ、はぁはぁいって、かわいそうだから。
走るのが大好きなボビィは
わたしよりずっとちいさいくせに
まっくろと、まっしろの長い毛を
風にふわふわなびかせて
すごいいきおいで走るから
まって、まって、そんなにはやく走れないよ!
わたしもボビィも、いきがはぁ、はぁ、って
わたしはあせが、かおにもうでにも、いっぱい、ばぁ、って。
そうしたら、それをボビィが、ぺろ、って。
こかげにすわりこんで、
なでて、なでて、そうしてまた走って。
またね、ってバイバイするのは
いつもとっても、さびしいけれど。
あなたは風の子
風があなたの矢となり盾となり
あなたのあそびをみまもるでしょう。
ねぇ、あそぼうよ
あそびましょう。
“おぼん”で、おともだちが
みんな、いなかにかえっちゃったから
家にひとりでいたならば
お父さんが
“ざいもくや”に行こうか、って。
お父さんのこぐ、大きなじてんしゃのうしろを
ついて走るのはいつも楽しくて。
“ざいもくやさん”は
みあげるような木がいっぱいの
木のかおりでいっぱいの
ひろい、ひろいところだった。
お父さんが、おみせのひととおはなししているあいだ
たったひとりの、かくれんぼ。
あの子だれ?
ああ、─ ─さんの。
おみせのひとのこえがする。
つかまえて、わたしをつかまえて。
とくい気に、あちらこちらとぐるぐると
そうするうちに気がつけば
木のかおりでいっぱいで、ほんとうにいっぱいで
高いたかい木がみんな、
いろんな色の、いろんな太さの木がみんな
いっせいにわたしを見おろしているようで
お父さんと、おみせのひとの、こえがどんどんととおくなり
なんだかきゅうに、ぞっとした。
そうしたら、お父さんが、
あぁ、そこにいたか、さぁかえろう、って、声かけた。
あなたは木の子
伐られた木さえ、すこやかにと
あなたのあそびをみまもるでしょう。
ねぇ、あそぼうよ
あそびましょう。
こんやはよみせ、あさからずっと
空ばかり見あげ、おてんきを気にしてた。
おとなりの、ひとみちゃんとかずちゃんと
いっしょに、おじちゃんにつれられて。
きんぎょすくいにヨウヨウつり
わなげにあてもの。
ざわざわと、ひとのなみ。
まぶしい、まぶしいやたいのでんきゅう。
でもどうして?
たべものはいつもだめ、あれもこれも。
ちょっぴりざんねん。
かえりみち、わざわざしんとしずまった
おはかのある、まっくらやみのほそいみちを
とおる、そのときに
おじちゃんが、こわいおはなしを
ぼそり、と、小声でつぶやいたものだから
さんにんで、だきあって、じだんだふんで
きゃあきゃあさけび
おじちゃんが、あははとわらったよ。
あなたは闇の子
闇さえあなたをいつくしみ
あなたのあそびをみまもるでしょう。
ねぇ、あそぼうよ
あそびましょう。
今日はピアノのおけいこの日。
なつやすみだからって、
ぜんぜんれんしゅうしていなかったから
あさからずっとピアノ、ピアノ。
ハノンとツェルニーはつまんないけど
でもソナチネはいつも好き。
この曲があがったら、次はきっと、
あの、だいすきな曲にすすめるはず。
だからいっしょうけんめいれんしゅうしたよ。
そうしたらせんせい、よくできましたね、って
さんじゅうまるをくれた。
とうとうこんどはあの曲がひける。
ずっと、ずっとあこがれていた曲。
あなたは音の子
音があなたを魅入り魅入られ
あなたの“あそび”をいとおしむでしょう。
ねぇ、あそぼうよ
あそびましょう。
あなたはだぁれ?
いつもわたしのそばにいて
いつもわたしにささやいて。
わたしはあなた
天の子、地の子。
目に見えぬ、手にも触れ得ぬ片翼の、
名残りのしるしの銀色の
自然とするり、抜け落ちて
一舞(ひとま)いの、羽根さえ残さず朽ち果てて
地に足の、すっかりと馴染むその刻まで、
ともにあれと使わされた。
希には、あるのだけれど。
肩羽と、小雨覆の片鱗を、いつまでも留め残す者が。
でもそれはまれなこと
ほんとうに、まれなこと。
ねぇ、あそぼうよ
あそびましょう。
あなたは天の子、あなたは地の子。
森羅万象の矢面に立ち
森羅万象の庇護の元
あそびあそんで、人となる。
わたしはみつかい、みちしるべ。
そのときまでの、それだけの。
ときがきたなら、うたかたと
たえてなくなる、みちしるべ。
ねぇあなた、ちいさいあなた。
わたしのこえがきこえるでしょう?
ねぇ、あそぼうよ
あそびましょう──。