扉の前に立つと、切り出したばかりの樹のほのかな香りがした。魔を撥
ね返すというとねりこの木……これはまた念の入った事だな……。私の
唇は思わず少し微笑んだ。張りつめていたこころの糸が、そのお陰ですぅ
と綻んでゆき、握り締めていた掌の力を少し抜いて、私は軽くその扉を
叩いた。
とねりこの扉は、こん……とぬくもりのある音をたてた。だがそれにも
かかわらずその音は、すっと私の頬の横を、鋭い勢いで駆け抜けてゆき、
後ろの暗冥の静寂(しじま)に吸い込まれていった。それを追うように
振り返り見ると、そこにはまるで鋭い剣先で一気になぞったような細い
月が、闇を裂いてわずかな、しかし確かな光りを放っていた。
「何方(どなた)でしょうか。」
部屋のなかからの声は厚い木の扉に遮られ、くぐもった音となった。
「月弓(つくみ)。」
私が低い声で答えると、かたりと閂のはずれる音がして、静かに扉が開
かれた。
現れた男の、二の腕をさえ覆う長い髪が、部屋のなかの蝋燭の光りを背
に浴びてその姿形を金のいろにふちどっていた。それはまるで天の神の
後光のようだった。
「月弓。どうかしましたか。」
八雲の瞳には探(あなぐ)る気配ひとつなく、いつものように静かに澄
んでいた。
「夜更けにすまない。もう休んでいたか?」
その言葉に対して、
「いいえ。」
とだけ返事をして、私を部屋のなかへと導くように、八雲は重い扉をぐっ
と押し開いた。
部屋は広くも狭くもなく、ちいさな窓のひとつあるのが印象的だった。
机、椅子、本棚、寝具……私は机に置かれた蝋燭に照らされたそれらを、
全てとねりこの木で作られたそれらをゆっくりと見回した。真新しい家
具と、蝋の燃える煤が織り交ざった不思議な香りがあたりを包んでいた。
「これが個部屋か。いいものだな。」
私がそういうと、八雲は私の為に椅子を引きながら、微笑んで答えた。
「夏には貴女のものにもなりましょう……私には少し早くに与えられた
だけに過ぎません。」
勧められた椅子に私は腰をかけた。確かに八雲の言うとおりだった。
ここ久遠の剣士には厳しい等級分けがなされており、第二等級以上の者
だけが二十歳を迎えた後に個部屋を与えられる。私は昨年二等級への昇
格を果たし、そうして夏には二十歳になるのだった。そして八雲は……。
「八雲。」
私はちいさな声で言った。そのために私はここに来たのだ。八雲は向か
い合った椅子に座り、相変わらず優しくゆらめく碧の瞳で私を見ていた。
太陽光の下では時折白金のように見えるその髪は、蝋燭のゆらめくやわ
らかな光りのなかではまるで繻子(サテン)のように煌めいていた。こ
のもの静かで、背丈ばかり高く細面の、ただ美しいばかりの、少年の面
持ちさえ残す男が本当に、剣を持てば誰一人として敵う者のない、鬼神
の強さを誇るあの男なのだろうか。数え切れぬ程感じた事を、私は今ま
た、そしてより強く感じないではいられなかった。
「貴方が朱壬を継ぐ者となられた事を心から嬉しく思っている。本当に
おめでとう。」
私はそう言ってこころの底より微笑んだ。
「こんな事、いつでも言える事なのだが……何だか皆の前では少し気恥
ずかしいようで……こんな夜更けに邪魔をする事になってしまった。」
八雲は私の言葉を受け、瞳線を少し斜め下に傾けた。それからちいさく
呟いた。
「……私が朱壬を継いだ後は、貴女も私を“様”と呼ぶのでしょうね。」
私はこころのなかに、ちいさな焔が芽吹くのを感じた。
「当たり前じゃないか。」
自分の声が予想外に大きく響いた事に、私は内心驚いていた。
「長、大神官、朱壬の継承者。この三人を凌ぐ者は久遠には存在しない。
三つ子でも知っている事だ。」
八雲は瞳を上げ、まるで恐ろしいような哀しみをあらわに微笑み、そし
て言った。
「貴女の言うとおりです。」
私は、は……と笑った。そうしないではいられなかった。
「八雲はあいかわらず贅沢だな。」
「贅沢……?」
八雲の瞳はふいをつかれたように円くなった。こんな時の八雲は、本当
にどこにでもいる、ただの年下の少年のようだった。私はほんの少し安
堵を感じた。
「そうさ。」
私は微笑み、続けた。
「貴方はいつもそうだ。天より賜ったありあまる才能で皆の称賛を欲し
いまま。十三歳で初めて課せられる等級試験では一気に二等級に合格。
その時も、そしてその翌年に第一等級に昇格した時でさえそうだった。
そうしてついには、久遠で剣を持つ者なら誰もが夢見てやまぬ朱壬さえ
も手中にする事となった。おまけに。」
八雲は真摯な瞳で私の言葉を受け止めていた。
「風姿は雲上の神々さえもかくのごとしというふうで、その上家には休
暇を待ち焦がれている愛らしい妹御までおられるというのに、そんな表
情をするなど贅沢でなくて何だと言うんだ。」
八雲の瞳がほんの少し、変わらぬ哀しみをたたえながらではあるが微笑
んだ。
「……尤も……妹御がもう少し元気になられれば尚良いのは勿論だが……。」
私は付け加えないではいられなかった。すると八雲はやわらかな声で呟
いた。
「……月弓は不思議な女(ひと)ですね……。」
私のなかに芽吹いたこころの焔が少しゆらめいた。それに動揺し私は言
葉に詰まった。するとすこしの静寂の後に、八雲は静かな声で話し出し
た。
「私が神官によって剣士の宿舎に連れてゆかれた時、貴女は既にそこに
居られました。休暇の際に、“家にもどらないの?”と貴女は私に声をか
け、“戻る処がないのです。”と私は答えました。休暇が終わり皆が宿舎
に戻ってくる日、朝陽が昇ると間もなく一番に、貴女は戻り私の元に来
たかと思うと、“はい。”と蓮花のちいさな花束を差し出しました。何の
事かときょとんとしている私に、“お土産だよ。”と貴女は言って微笑み
ましたね……。」
私のなかを一瞬に細い氷が貫いた。
「そんな事もあったかな……。」
隠すように微笑しながらそう言うのが精一杯だった。そうだ……あの時
も八雲は全く同じ表情をしていた。たった五歳の時から八雲の澄みとお
る瞳の奥底には小暗い哀しみが積もり続け、今もとどまる事を知らない
……。
「月弓。」
ふいに八雲の声に力がこもったような気がした。
「貴女にお願いがあります。」
私は口元を綻ばせた。
「八雲にものを願われるなど初めての事だな。継承の祝いに、私にでき
る事なら何でもしよう。」
八雲の瞳が静かに煌めいた。そして静かに言った。
「どうか教えて欲しいのです……剣を持つ意味を。」
一瞬にして私は絶句した。全身を名状できない恐怖が支配した。八雲の
碧く澄む瞳から逃れるように横下を向いた。訳のわからぬ恐れが嗚咽と
なって襲ってきそうで、そのまま口を手で覆った。顔が蒼ざめてゆくの
がわかった。冷たい汗が掌ににじんでゆくのが感じられた。
「私は……」
ようやく絞り出した声の、震えをおさえる事のできたのが不思議だった。
「私は何ら変哲もない家の娘に生まれた。だが少々お転婆に過ぎたらし
く、懲らしめにと両親が剣士の修行の場に私を放り込んだ。半年も持た
ないと両親はふんでいたようだが、私には全てが性に合っていたのだろ
う。修行は辛さの連続だったがやり遂げた満足感は大きかった。十歳に
なり真剣を与えられた時の感激は今も覚えている。だが初めて人を斬っ
た時の感触……それは指先からいつまでも離れず、その夜は眠れなかっ
た。それからしばらくして命に止めを刺した時は……八雲も知っている
だろう、私は惨めにもその場で嘔吐した。幾晩も眠れない夜が続き、食
物は喉を通らなかった。人を斬ってこその剣士。当然の事を私は自分の
こころに幾度も必死に言い聞かせ、そうしてようやくもう一度真剣を手
にする決意をした。……そこには意味など何もなかった。ただの手段に
過ぎなかった……自分の人生を正当化させるための。それに……私は、
女であること、非力である事を補う為に、独自の剣技を編み出す事に楽
しみを見いだしていた。そう、私は剣を楽しんでいた。……だがそこに
意味はなかった。暈をひきおこすような虚無と、楽しさ。それが同居し
ていた。今も、変わらない。……貴方の問いに、私は答える事ができな
い。」
それだけを言い終えた時、私は不覚にも落涙した。何の涙であったかは
今もよくわからない。だが八雲はそんな私をまのあたりにして明らかに
驚き、困惑していた。
「月弓……そんなつもりではなかった。」
八雲の声は消えゆくようだった。今度は私の方が困惑した。私こそ、こ
んなつもりではなかった。だが、それをどう伝えれば良いかがわからな
かった。言葉は虚ろに私の思考の外側をくるくると巡るばかりだった。
八雲はかたりと椅子から立ち上がり、私の方へと歩み寄った。そして私
の傍らに膝をつき、その白い手を私の手に重ね合わせた。
「愚かな事を問いました。どうか許して下さい。」
私のなかの焔が、大きな一本の火柱(フレア)を巻き起こした。
「八雲。」
申し訳なさにゆらめく碧の瞳を私は、自分の意に反して潤みつづける瞳
でしかと見つめた。
「貴方が居なければ、私はとうに親の元に逃げ帰っていただろう。」
八雲の瞳がまた、円くなった。
「どんな人生にも苦しみはあるのだろう。貴方のそばでこそ、私は私と
して活きてこれた。とても感謝している。八雲。貴方の御陰だ。」
私は微笑んだ。だが八雲は、今度は別の戸惑いに瞳を泳がせていた。
「貴女は……」
何だかあらぬ方を向いて、八雲はぽつりと言った。
「貴女はいつも私を驚かせる……。」
恐らくは無意識に、八雲の手に力がこめられた。その掌のぬくもりに、
私はすべてを決意した。立ち上がる私の肩に添うように腕を回し、八雲
は斜め上から私の瞳を静かに見つめた。それから机の上の、蝋燭の火を
ふぅと吹き消した。
夏が来て、私も個部屋の住人になった。だが八雲の私への態度は以前と
全く変わる事がなかった。年が明けてすぐに継承の儀が行われ、八雲は
正式に朱壬を持つ者となり、名実共に久遠の剣士の頂点に立った。八雲
自身が言っていたように、彼は誰からも八雲様と呼ばれるようになり、
私も当然例外ではなかった。だがやはり変化はただそれだけの事だった。
その年の剣士編成の折、私は八雲様の配下に任命された。
「有難う御座います。身に余る光栄に存じます。」
私がそう言うと、変わる事のない涼やかな美しい瞳で八雲様は言われた。
「実力本位で人選したまでの事。礼を言われる事ではない。月弓。貴女
の力量は誰もが認める処。是非これからも私の力となって欲しい。」
私はほのかなしあわせのなかに居た。
八雲様の妹君である彌勒様が亡くなられた時の弔いには、私が剣士代表
として参列した。まだ年若い彌勒様はうっすらとそのくちびるに微笑み
をうかべ、永遠(とこ)の眠りについておられた。美しく慈しみをたた
えた彌勒様の、とりわけ髪の青みをおびた不思議ないろは、しばしの間
私をとらえて離さなかった。だが外にたたずむ八雲様に、私はただの一
言も御声をかける事ができなかった。かけた途端にぱん、と音を立て、
全てが塵と消滅してしまいそうな気さえした。八雲様の魂魄はその体躯
から離脱して、悲しみの叫び声をさえあげられずにさまよっていた。弔
いの後私は個部屋に戻り、泣いた。何もかもが、ただ、悲しかった。
その後朱壬と共に八雲様が姿を消した時も、私は驚かなかった。ただ戻っ
て来て下さる事だけを願い、信じて待った。そしてそれは真実となった。
「月弓にも随分迷惑をかけた。」
そう言ってから八雲様は微笑んだ。
「私はもう朱壬の継承者などではなくなった。だから……以前のように
呼んでくれるな?」
生まれて初めて久遠の外の世界に触れた事もあるだろう。二十歳を越え
た事もあるだろう。私は八雲のなかに、以前と違う何かを感じていた。
相手が何処であれ誰であれ、朱壬を手にした八雲の前に敵などありはし
ない。それでも亜魏の急襲は久遠に深い爪痕を残した。最前線で戦った
八雲は、私などよりずっと酷い傷を負った。その深い傷にまみれた体で、
ある日八雲は私の個部屋を訪れた。その瞳には明らかに逡巡の色が浮か
んでいた。
「月弓。無理を承知でここに来た。……貴女以外に頼む者がない……。」
私は微笑んだ。
「貴方の願いはいつも無理難題だ。……今度は何だ?」
八雲は微笑まなかった。ただ静かに私の瞳をみつめた。そしてやがて決
意したように口火を切った。
「私はこの後久遠を去り、ある女性の敵討ちの旅に同行する。だがその
女(ひと)はこのかた真剣を持った事すらない……。」
不思議な程私は八雲の言葉を冷静に受け止めていた。だが八雲は一瞬
言いよどんだ。その一瞬を私はついた。
「期限は。」
八雲は返答に間をおいた。
「私の傷が癒えるまで……そうその女(ひと)には説明した……長く誤
魔化した処でせいぜい一月半から二月……。」
これには流石に私も言葉を失った。だが八雲の表情を見れば全ては明ら
かだった。
「八雲。」
しばらくの重い静寂の後私は言った。私は覚悟を決めていた。あらゆる
覚悟を決していた。
「その無理難題、引き受けよう。そのかわり。」
私は裂かれるような痛みを感じた。だがもう後戻りはできなかった。
「教えてくれ。何故あの時……貴方は一瞬とまどった。」
そう、私は確かに見た。亜魏が襲いかかってきた時、八雲はまるで呆け
たように、一瞬その場に立ち尽くしたのだ。そうでなければ朱壬を持つ
八雲が、あのように酷い太刀傷を負う事などあり得ない。そしてひいて
は……久遠はここまで無惨に攻め入られなかったはずだ……。
八雲は瞳を落とした。そしてちいさく呟いた。
「……香りがした……。」
「かおり?」
予想外の返答に思わず私の口から鸚鵡返しの言葉がついて出た。八雲は
瞳を落としたまま両の手を握り締めていた。
「初めて彌勒と会った時、彌勒と父上から、青いような香りがした。久
遠にある湖よりももっと濃いような香りだった。……その同じ香りが亜
魏の連中からも漂った……。」
私の体を痛烈な戦慄が走り抜けた。確かに亜魏は大海原に囲まれた大国
と聞く。そして……私は思い出した。八雲はずっと以前にこんな事を言っ
ていた。“月弓は海をご存じですか? どんなものなのだろうな……時々
妹が懐かしそうに言うものだから。”
「……それでも貴方は行くんだな。彌勒の故郷(さと)かも知れない亜
魏に……仇を討つ為に……。」
我を忘れていたにしても、虚け至極を私は口走った。だが八雲はそれに
対しては何も言わず、静かに椅子から立ち上がった。そうして微笑んで
言った。
「月弓。本当にこころより礼を言う。その女(ひと)を外(おもて)に
待たせてあるが、会ってくれるか。」
は……私はようやく正気を取り戻した。
「当たり前じゃないか。最初から一緒に来れば良いのに。」
だが八雲が扉を開き導き入れた女性を見て、私はまたしても奈落につき
落とされた。
「如月といいます。どうか宜しくお願いします。」
そう言った凛と美しい女性の髪は、あの彌勒と全く同じいろなのだった。
八雲の……八雲の瞳に降り積もる哀しみは、一体いつ止むのだろう……。
以来私は如月と寝食を共にした。まず最初に人を斬る事の重さを、血に
まみれる事への覚悟を、私は生意気にも諭すつもりでいた。だがそれは
全く無用だと、如月の瞳が強く語っていた。私はただ剣技の基本と、主
に受け身の手ほどきに専心した。そう、後は八雲にまかせておけば良い。
如月は筋が良く、驚くべき早さと正確さでそれらを体得していった。
寡黙で、深い悲しみと怒りに身もこころも浸し切っていた如月ではあっ
たが、それでも共に過ごす時間は苦ではなかった。そこに寂しさの、醜
い羨望の、一片もなかったと言えば嘘になる。だが私は自分でも驚く程
事実を真摯に受け止めていた。
一月程経った頃、一人の男が八雲を訪ねて来た。広い肩幅と筋肉質の体
躯、八雲と同じ位に高い背丈。一目で剣士と分かる気をその男は発して
いた。だが何よりその銀いろの瞳。その鮮烈な光りは見るもの全てを圧
倒した。この、修羅と名乗る男も亜魏への旅に同行するという。男は八
雲の個部屋に居座り、旅立ちまでの間を、八雲の口添えにより、我々久
遠の剣士達と手合わせをして過ごしていた。
修羅の剣術は明らかに我流だった。だが、強かった。強い相手に血の騒
ぐのは剣士の常。ある時私は八雲にその男との手合わせを願い出た。そ
うして真剣を持ち対峙した、その時。私は確かに見た。修羅のその、薄
ら陽を浴びて閃光を放つ銀の瞳の奥に、八雲のそれとは質の違う、だが
やはり小暗く、底知れぬ、哀しみと呼ぶよりないものを。
勝負は修羅のものだった。だが男は息を切らせ言った。
「女でここまでやる奴がいるとはな……。さすが八雲の生まれた地だぜ。」
その低い声に、私はこころのなかに幽かな灯がともるのを感じた。誰に
もできなかった事を、この男なら成し遂げるかも知れない。その名のと
おり、幾度もの修羅を味わって来たのであろう剣に生きるこの男が、彌
勒のたましいとともに、如月とともに、八雲の哀しみを止める救いにな
るかも知れない。そう思った。何故だかはわからない。ただ自分が、そ
う思いたかっただけなのかも知れない。
八雲が去った久遠に、しばらくして私も別れを告げた。それは八雲にあ
の質問を投げかけた時に、堅く心に決めた事だった。久遠において、八
雲はいつも間接的にではあるが近くにいて、剣揮う私を見守っていてく
れた。そうして身につけたこの剣技を、久遠を、八雲の元を離れて尚活
かす事ができるかどうか。一人前の剣士として生きていく事ができるか
どうか。噂に聞く、子夜谷と呼ばれる剣士の集まる処、そこに行き私は
もう一度自分を試してみたいと思った。そうして剣を持つ事の意味を、
もう一度考えてみたいと思った。
何もかも、八雲の事は、おもいでである。気ままな一人旅の合間に、あ
の日と同じような細い上弦の月の元に、私の名前の由来となった夜に、
これを記す。